今回の総合アレルギー講習会にて薬剤アレルギーの講演で、気管支喘息の患者に造影剤を使用するときはプレドニンなどのステロイドを前投与するという話をしていました。数年前より学会でもこのようなことを言うようになってきていました。以前よりおかしいと思っていたので今回質問しました。理由はステロイドはアナフィラキシーを予防する上でも、アナフィラキシーの治療をする上でも有効性はないというのが事実であり、アナフィラキシーの治療は第一選択はアドレナリンであり、プレドニンを前投与してアレルギーを起こした薬を投与してはいけない、ということはアレルギー学会を挙げての啓蒙活動だったはずです。造影剤に限って前投与が望ましいというのはどうしても納得がいきませんので質問してみました。解答ははどうしても必要な薬を投与する場合、少しでも予防したいという気持ちからプレドニンを前投与するという答えになっていない回答でした。造影剤のアレルギーを予防する根拠はないとのことでした。根拠のない治療をアレルギー学会の教育講演でするのはとんでもないことだと思いましたが、そこでやめました。分かる人にはわかったと思います。それで調べてみました。
日本医学放射線学会で2017年06月29日に「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」を発表し、2018年11月15日にこれを改訂しています。これが元凶だったようです。ただし根拠がないことから2022年に積極的には推奨しないとしていますが削除はしていません。2022年に米国放射線医会(ACR)の最新のガイドラインでは、エビデンスが不足しているとしながらも、多くの専門家がその有効性を信じているとの理由から、前投与を考慮してもよいとしています。削除するとそれを信じて施行している現場で混乱が生じるということです。これを理由に日本医学放射線学会は削除しなかったようです。有効性を信じているなど全く科学的根拠がありません。謝罪して訂正すべきことです。本来はアレルギー学会が削除を要請すべきと思います。またアレルギー学会では教育講演などで間違った対応を講演してしまったことを謝罪するべきと思います。現時点で間違ったまま理解している専門医が多くいると思われます。
2015年ごろまでは喘息に造影剤使用する際、注意事項はなにかを問う紹介状がしばしばありましたがその後少なくなり。喘息はプレドニンを前投与すれば安全に造影剤を投与できると勘違いされ気にしないで喘息に造影剤が投与されるようになってきていました。理由が分かった気がします。以前は喘息は造影剤によるアナフィラキシーのリスクが高いので必要な場合にのみに造影剤は使用し、いつでもアナフィラキシーをきたしても処置できる体制で施行してくださいと返事していました。それが正しかったことが分かりました。現在アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2022にはX線造影剤でもMRI造影剤でも、アナフィラキシー重症化因子として気管支喘息が挙げられており、特に必要な場合にのみ慎重に投与するのが原則となっている。と記載されています。あやうくプレドニンの前投与を奨める返事を書いてしまうところでした。
ガイドラインも専門家も正しいことをいうとは限りません。そしてそれが根拠なしでまかり通ってしまうことがあり、注意が必要です。論文よりものはものごとを白黒つけるのは困難で、解釈により結論が変わってしまうことも有ります。論文を根拠にガイドラインにかかれていたり、専門家がお話をしていてもそれが正しいとは限りません。原文を読んで吟味しないといけません。今回の様に根拠もなくガイドラインに載ったり、専門家が話をしたりすることも有るのです。
次回は今回の学会であった根拠なしに皆に広がった例をお書きします。


