高気圧環境潜水医学会 のシンポジストをやりました - 武蔵小金井の山崎内科医院|総合内科・アレルギー専門医|健康スポーツ医

2019年 6月 17日

高気圧環境潜水医学会 のシンポジストをやりました

昨日 高気圧環境潜水医学会  のシンポジストをやりました

スクーバダイビングで問題となる呼吸器疾患
山崎内科医院 山崎博臣

ダイビングで問題となる肺疾患は慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、肺嚢胞、自然気胸、肺疾患が原因で起こった気胸の既往、呼吸器疾患に起因して肺機能が異常か運動能力が低下しているものである。50歳以上の潜水事故死亡者の割合は1997-2002年では21%だったが2012年では50%と増えている。2010年ごろまでは潜水死亡事故のRiskは40代以上の心疾患が問題で高齢者ダイバーの増加によると言われてきた。しかしダイバー人口の年齢構成をみると高齢者ダイバーの割合がそれほど増えているわけではない。高齢者の特殊な身体的な要因があることが推察される。2017年から2019年6月までの最新のデータでも潜水死亡事故は50歳以上で50%を占め、相変わらず多い。
(http://safedive.or.jp/forums/forum/accidentsより集計)
人間ドック受診者の閉塞性換気障害を示す割合は年齢とともに増え特に70歳以上の喫煙者では45%に及ぶ。慢性閉塞性肺疾患も年齢とともに増え、70歳以上では20%に達する。50歳以上の潜水死亡事故が人口に比し極端に多いことは高齢者の運動能力の低下とともに閉塞性換気障害との関連が示唆される。慢性閉塞性肺疾患は自覚症状に乏しいため問診ではチェックできず、ダイビングしてしまっていることが考えられる。肺気腫のうち閉塞性喚起障害を示すものが慢性閉塞性肺疾患でこれは潜水禁止と考える。また低肺機能を呈する気管支喘息も同様と考える。それ以外の閉塞性喚起障害(老人肺、喫煙者など)は今後の議論が必要である。自然気胸の再発に関し、文献をまとめてみた。再発率は約20%で1年以内に再発するものが約60%で時間経過とともに再発は少なくなり8年以上たって再発したものはなかった。ただし10年までしか経過観察されていないし検討した症例数は少ない。再発例の3分の2くらいは肺嚢胞が存在したが肺嚢胞がない場合でも再発することが少なくない。非喫煙者が再発するリスクが高い。手術は再発リスクを下げる。もし水中で気胸が生じた場合は致死的になるため今までは自然気胸の既往は潜水禁止とされてきた。しかし年月が経過すれば再発するリスクは少なくなり、肺嚢胞がなければ再発リスクが低くなるので条件付きで自然気胸の既往があっても潜水復帰可能にしてはどうかという意見が出てきている。確かにその傾向はあるが症例数も少なく、決定的な許容条件はない。そこで本人に危険性を話し、それを理解して潜水復帰したいということであればという条件で許容する条件を考えてみた。肺嚢胞がなく、初発後10年以上再発ない場合は許容するというのはどうだろうか。気管支喘息は自覚症状に乏しいことが多く、潜水適性を決めるのは呼吸機能検査、ピークフロー値の測定が必須である。呼吸機能検査が正常であることとピークフロー値が自己最良値の80%以上を常に維持することが必要である。気管支拡張剤を使用すると症状がマスクされるため使用している場合は潜水禁止とする。症状がないという気管支喘息の患者さんに詳しい質問をすると咳、痰がでる、いろいろな刺激や運動で息切れ、苦しさを訴えていることがわかる。今までの問診を見直し咳、痰が3週以上続くことがあるか、階段や運動での息苦しさが日によって異なることがあるか、風邪やなんらかの刺激で苦しくなることがあるかという質問をすると微細な症状を見逃さない。このような問診をすると問題となる呼吸器症状を見つけ出すことが可能である。呼吸器疾患があるとき運動能力の低下、呼吸機能異常がある場合、潜水禁止となる。運動機能の評価は5Metsの運動を楽にこなせる運動能力とするのが適当と考える。20cmの踏み台(階段がほぼ相当する。)1分間に80ステップ(20往復)、5分昇降し脈拍を測定、138-年齢/2を越えなければ運動能力ありとするのがいい。疾患がなく運動能力低下がある場合はインストラクターと2人で潜ることを条件とすることなど検討する。